【第115回】労働契約の競業制限条項について (3)
上海市労働及び社会保障局により公布される「『上海市労働契約条例』の実施に関する若干問題への通知(二)」(以下「通知」という)第4条によれば、競業制限協議には補償金の支払基準を約定している場合、その約定に従い、約定がなければ、従業員が補償金の支払を企業に要求することができます。これにより争議しているならば、企業が従業員に競業制限義務の履行を引続き要求する場合、補償金を一括して従業員に支払います。企業が残り期間の競業制限義務の履行を要求しない場合、労働争議処理機関により確定された基準に基づき、実際に履行した期間の補償金を従業員に支払わなければなりません。
上記裁判例におき、甲が離職前の12ヶ月分賃金(25万元程)をA社に要求するが、裁判所が最後、12ヶ月分の現地平均賃金(2万元程)の支払をA社に命じました。当該基準の合理性に疑問であり、その論述は省略します。
実務上には、既に支払った在職中の賃金には競業制限期間の補償金が含まれ、離職後の競業制限義務の履行を離職従業員に要求する一方、補償金を別途支払う必要がないと主張する企業はよく見られます。
しかし、従業員に支払う賃金と競業制限期間の補償金とは、その性質、支払時間上から見れば、互いにかなり相違し、上記A社の主張を認めれば、会社が競業制限期間の補償金の支払義務を容易に避けることになり、一般的には、裁判所の支持を得られ難いと考えます。