秦氏は頭金の割合データに続き、2組目のデータ「2012年の各国の住宅ローン残高の国内総生産(GDP)に対する比率」をうち出した。このデータで注意を引くのは、米国では対GDP比が50%を超え、英国は50%に迫り、フランスは40%を超え、日本は20%を超えて30%に迫るが、中国は20%を下回る点だ。
秦氏は、「ここから判断すると、現在の中国不動産市場の調整を受けて、大規模な意図的差し押さえの現象は出現せず、大規模な投げ売りの現象も出現しない」と話す。
それでは中国には日本の不動産市場のような状況は出現しないのだろうか。秦氏は否定的な回答を出し、この回答の根拠となる3番目のデータを紹介した。
秦氏は、「日本の不動産市場は2度にわたる暴落を経験した。1975年と89年のことだ。データからわかるのは、68年に中国の世帯数と住宅数の割合が1対1となり、不動産が暴落した89%は、この割合が1対1.3だったことだ。つまり、住宅数が世帯数より30%多かったのだ」と述べた上で、次のように指摘した。日本は1970年代初頭に都市化率がすでに76%に達し、不動産バブルが崩壊した90年代当初までの約20年間、都市化率にはほとんど動きがみられなかった。
秦氏は、「私の見方では、中国は日本と異なり、現在の都市化率は53%で、世界一般の水準に比べれば、さらに10数ポイントの上昇が見込まれる。70%の水準に達したとしても、さらに伸びる余地がある」と話し、これはつまり、中国では毎年、都市部の常住人口が約2千万人増えるということを意味すると付け加えた。
▽3つのリスク
それでは結局のところ、現在の中国では住宅が余っているのだろうか、不足しているのだろうか。秦氏は、「第6回人口一斉調査のデータに基づいて、住宅(共同設備の住宅を含む)の数を試算すると、中国の都市部では住宅の数と世帯の数の比率が1対1に近づいている。つまり全体としていえることは、現在の中国では住宅は(数の上では)基本的にバランスが取れているが、その構造はアンバランスで、新たに増加する都市人口のためにさらに住宅が必要だということだ」と話す。