本文には、実務上の視点から、主に中国におけるドメイン名紛争の専門裁決機構の裁決方式及び手続(以下「裁決手続」という)を中心に説明しておく。
今日、ドメイン名が企業のサイトと直接的に結びつき、ドメイン名を通じて、企業のサイトを登録することができ、ドメイン名がサイト上の企業の住所番号とも考えられる。登録上の便宜又は覚えられやすいため、多くの企業は自社の商号、商標などの民事権利と同一又は類似する標識をドメイン名として利用しているのは現状ある。一方、ドメイン名の使用権は先に取得した人にあり、登録商標や著名なブランド名だからといって取得が特に制限されるわけがないので、「早いもの勝ち」、使用権をめぐって紛争が多発しているのも事実である。このような状況の中で、悪意をもって関連するドメイン名を取得し、高額な値段を要求したり、また企業のビジネスを妨害したりするサイバースクワッターと呼ばれる人々が現れる。如何にこれらの不正使用行為に対応するべきか、特に、実務上からみれば、侵害されやすい目標としての日系企業は、事前にその対応策を講じておき、また、司法(裁判所)及び専門裁決機構の救済措置(裁判外紛争処理)を検討しておく必要がある。一般的に、ドメイン名紛争の救済措置としては、司法を通じて、又はドメイン名の登録者、所有者と協議し、和解の形で紛争を解決することが考えられる。
一方、関連する紛争の専門裁決機構にドメイン名紛争解決の申出を提起することも、快速、有効且つ時間、費用を省く対応策だと考えられる。今回は、司法手段ではなく、専門裁決機構の裁決手続及び注意事項を中心に説明する。
ドメイン名の類型というと、基本的には二つの類型が考えられる。一つは、一般トップレベルドメイン名(Generic top-level domain)であり、主に.com、.netなどが挙げられる。もう一つは国別ドメイン名(contry code top level domain)であり、主に.cn、.中国、.公司が挙げられる。ドメイン名類型そのものの相違によって、ドメイン名争議を受理する専門裁決機関、その受理要件、手続などは変わる。