中国科学院心理研究所の陳毅文研究員は、「女性のクローゼットというものは永遠に服が足りないもの。これは物質の占有状態をいうだけでなく、一種の心理状態を指す。ショッピングに依存する人は買い物の結果よりも買い物のプロセスをはるかに重視する。ショッピングカートに商品を入れ、注文をクリックし、宅配便で商品を受け取る、という具合に、通販は従来の買い物スタイルにあった時間的な制約と空間的な制約をうち破り、消費者に心理的な満足感と優越感を与えた。多くの消費者はネットの丁寧なサービスを受けることに夢中になり、買い物がもたらす快感の虜になり、少しずつネットに依存するようになる」のだという。
決済方法の新しさも、消費者を買いすぎに走らせるみえない要因の一つだ。陳研究員は、「現金による消費、カードによる消費、クレジットカードによる消費など、決済方法ごとに買い物体験に与える影響は異なる。実店舗で現金で買い物する時は、支払いという行為の概念は相対的にはっきりしているが、通販では現金による取り引きの必要がないことがほとんどで、「お支払い」のボタンをクリックすれば支払いは完了する。これは自分の支払い能力に対する認識をある程度鈍らせることになり、知らず知らずのうちに大量の消費をしてしまうことにつながる」と指摘する。
低価格の販売促進キャンペーンや人為的なイベントデーなどのネット販促キャンペーンが、消費者を過度の消費へと誘い込んでいる。
北京師範大学通信販売研究センターの李江予副センター長は、「ネットショッピング環境の利便性の向上がますます多くの消費者を引きつけ、ネットショッピングがうち出す新たな販促モデルが多くの消費者を引き込んでいる。従来のオフラインルートに比べ、ネットというプラットフォームにはより大きな価格的強みがあり、インパクトや魅力の極めて強い商品が詳しく紹介され、販促のための優待もあり、消費者は節約できる、お得に買い物できるという心理的な暗示を受けることになる。ビッグデータの利用を通じて、企業は社会の注目点を分析できるようになるととともに、分析の結果を買い物と結びつけ、それぞれの消費層に見合った割引や販促の戦略をうち出すことが可能になった。モバイルソーシャルネットワーキングメディアにおいて、人々はお互いに情報を共有したり、おすすめしたりするようになり、通販への意欲が一層かき立てられるようになった。研究の結果、買い物依存にはゲーム依存と同じように、一定の奨励メカニズムとフィードバックのメカニズムが存在し、脳は買い物行為の指令を繰り返し出すうちに、買い物への衝動に駆られやすくなり、繰り返し買い物したい衝動に駆られやすくなる」という。