中信証券の彭文生チーフエコノミストは、「発表されたばかりの第1四半期および3月の経済データからわかることは、経済の下方圧力が引き続き拡大しているということだ。社会の資金調達規模では、帳簿内の貸出以外の資金調達が予想よりも少ないとみられる。そこで今回の準備率引き下げは主に経済の下方圧力に対応するための措置であり、同時に外国為替資金残高の減少による通貨投入量の減少へのリスクヘッジであり、社会の流動性の適度なゆとりを維持するための措置だといえる」と話す。
中国交通銀行の連平チーフエコノミストは、「当面の経済の下方圧力の大きさを考慮するだけでなく、中・長期的にみれば、ネットバンキングと最近の株式市場の好調さにより預金の一部がそちらに流れており、今後は預金の口座数と預金残高の伸びがある程度鈍化することが予想される。よって今のタイミングで預金準備率を引き下げることには十分な必要性があるといえる。大まかに計算すると、今回の準備率引き下げで1兆1千億元から1兆5千億元の資金が市場に出回ることになる」と指摘する。
▽政策の意図はどこに?
専門家によると、人民銀は今回、預金準備率の引き下げをうち出しており、準備率引き下げは適切な時期に金利引き下げへと「バトンをつなぐ」見込みだ。通貨政策ツールを組み合わせて利用することで、企業の資金調達のコストの高さや困難さが効果的に緩和されるという。
連氏は、「昨年から2回の金利引き下げが行われ、資金調達コストは低下し、貸出金利も引き下げられた。預金準備率を引き下げて金利引き下げの効果がよりよく発揮されるようにする必要があった」と分析する。
今回の準備率引き下げでは全面的に引き下げだけでなく、ターゲットを絞った調整にも重点が置かれている。農村信用合作社や村鎮銀行などの農村の金融機関に対しては、1.0%の引き下げのほかにさらに準備率を1.0%引き下げるとともに、農村合作銀行の準備率を統一的に引き下げて農村信用合作社と同じ水準にする。中国農業発展銀行に対しては、1.0%に引き下げのほかにさらに準備率を2.0%引き下げる。慎重な経営の要求を満たした「三農」(農民、農村、農業)または小規模・零細企業への貸出が一定の割合に達した国有銀行および株式制商業銀行に対しては、同類の金融機関の法定水準を0.5%下回る預金準備率を執行することを認める。