▽南アジアのホテル市場の取引はわずか1件
南アジア地域でのホテル取引は第3四半期、インドのホテルデベロッパー「Samhi」によるビシュヌプリヤホテルからのフォーポイントバイシェラトン・ヴィシャーカパトナム(124室)の購入の1件だけだった。取引額は9億インドルピー(約1420万ドル)だった。
シンガポールのホテル事業者の資金圧力は小さく、資産売却の意向は低いレベルにとどまった。第3四半期、シンガポールでは売却を待つホテルは少なく、取引は成立しなかった。
タイ市場も同様に取引成立はなかった。バンコクで8月、中心部の繁華街で爆発事件が発生し、ホテルの業績に影響をもたらしたことも、投資家が取引を控えて様子見の態度を取ることにつながったと見られる。だがタイの市場は、東南アジアのその他のホテル市場に比べると、高い柔軟性を備えている。
▽オーストラリア・シンガポール市場で活発な取引
2015年第3四半期、オーストラリア市場では合わせて14件のホテルの取引があった。オーストラリア本土と海外の投資家は今年、同地のホテル市場に高い自信を保っており、シドニーやメルボルンなどの主要都市だけでなく、ダーウィンやケアンズ、パースなどの地方市場も活発な動きを見せている。オーストラリア政府は、アジアとの隣接という地理的な優位性を十分に生かし、北部地域のインフラ改善に力を入れている。
サヴィルズの分析によると、中国人観光客は、オーストラリアの観光業にとっての主要な旅客源であり、オーストラリアのホテル市場は中国に大きく依存してる。中国経済の鈍化は、ホテルのステークホルダーの不安につながり得る。だが売却を待つ資産が少なく、ホテルの業績も好調なオーストラリアは、投資の「安全港」と呼ばれており、投資の意向は今後も高いレベルを保つ見込みで、とりわけ地理的な優位性を持つアジアの投資家の人気は根強い。
ニュージーランドでは3件の取引が成立し、取引総額は2640万NZドル(約1700万ドル)で、アジア太平洋地域の取引総額の1.0%を占めた。