日本の安倍晋三首相は先日、靖国神社を「電撃参拝」した。中韓両政府は直ちに極めて強く反応し、米国など他の国々も次々に驚きと不満を表明した。これによって最も損なわれたのは表面的には中日関係、韓日関係だが、本質的には日本自身の国益である。(文:張雲・新潟大学准教授。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
第1に、中韓両国を見てみる。中日関係、韓日関係は過去1年間非常に緊張し、歴史問題や安全保障政策における安倍内閣の言動に中韓は強く警戒してきた。3カ国の最高指導部が同時に交代するという黄金の時期にあって、日本と中韓の首脳会談はまだ行われていない。安倍氏は対話のドアはオープンだと主張し続けているが、参拝の伝えたメッセージは、日本が外交的配慮において中韓をほぼ完全に無視しているということだ。中韓としては、日本側が自国を無視するとの最後の一線をすでに示した以上、対日政策の確定がかえって一段と容易になった。安倍氏は在任中、近隣国との関係で長期的孤立に直面する可能性が高い。この孤立が日本経済に影響を与えるのは必至だ。
第2に、米国を見てみる。日本の首相による靖国参拝の問題において、米国は通常と異なり明確な姿勢を初めて表明し、周辺国との関係の扱いに日本が失敗したことに失望をあらわにした。米国は、日本は戦略的対話を行えるパートナーではないと考えるにいたった。「米国は自らの力が相対的に下降する中、東アジアの安全保障において日本のプレゼンスの強化を求めており、日本が安全保障政策を『積極的』に調整すれば、歴史問題では沈黙を保つ」と安倍氏は考えているのかもしれない。だが日米同盟は安保同盟であって、歴史問題同盟ではない。歴史認識に関して、ワシントンは日本の共感者ではない。米国外交において理想主義という道義的一面は虚偽性を備えるが、基本的な道義原則を放棄することはない。その上、靖国参拝による北東アジア情勢の一層の緊張は、米国の安全保障上の利益そのものにとって現実的脅威となる。安倍氏は就任以来日米同盟の強化を仰々しく宣伝しているが、参拝の結果、反対に日米関係は弱まっている。