中国が対欧州外交に再び力を入れている。李克強総理がまもなく今年2回目となる欧州歴訪に出発する。今年は中国外交にとって正真正銘の「欧州年」になりそうだ。(文:王義桅・中国人民大学EU研究センター長、教授。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
ロシアへの訪問のほかに、李総理の今回の欧州歴訪には以下の3つの任務がある。
(1)第3回中独政府間協議への出席、ドイツへの公式訪問。
(2)イタリア・ミラノで行われるアジア欧州会合(ASEM)の首脳会合(サミット)に出席。
(3)イタリアへの公式訪問、ローマにある国際連合食糧農業機関(FAO)での演説。
これら3大任務を総括すると、「シルクロード経済ベルト、21世紀海上シルクロード(一帯一路計画)」を通じたアジア・欧州の相互接続を推進し、さらに影響力をアフリカなどにまで広げ、中国・欧州協力の大陸間にわたる効果を発掘することだ。
ドイツはEUの中でも中国の主要な協力パートナーであり、ロシアをつなぎ、ユーラシア協力を実現するあしがかりとなる。ドイツのデュッセルドルフ市は、中国とドイツを結ぶ渝新欧鉄道の終点でもある。
アジア欧州会合は大陸間協力の先駆けであり、今回の会議では、EUのコネクティング・ヨーロッパ・ファシリティ(CEF)と中国のシルクロード計画をいかに結合させるかが重点的に話し合われる。
イタリアはかつて、陸・海のシルクロードの終点だったが、現在においても、欧州・アジア・アフリカの大陸間協力を結びつける架け橋としての役割を果たすことができる。
第16回中国・EU首脳会議では、中国・EU関係の3つの位置づけが以下のように打ち出された。
▽世界最大の発展途上国と世界最大の先進国共同体である中国とEUは、世界の平和を守る「二大パワー」である。
▽世界の重要なエコノミーである中国とEUは、共同発展を促進する「二大市場」である。
▽東洋、西洋文化の重要な発祥地である中国とEUは、人類の進歩を促す「二大文明」である。
以上の点をふまえると、中国と欧州の協力によって、以下の3つの効果が期待できる。
第一に、シルクロードの夢により、より包括的なグローバル化が推進される。近年、米国はTPPやTTIPといったハイレベルなグローバル化を提唱し、中国を排除し、欧州と日本に対する戦略的コントロールを強めている。一方の中国は、「一帯一路計画」を提起し、EUも欧州新シルクロード計画を提起した。その目標はリスボンからウラジオストクまでをカバーする自由貿易区の建設だ。パートナー国は「モスクワとブリュッセルの間で選択を迫られる」ことはない。これにより、中国と欧州の大陸間協力が実現する可能性が出てきた。陸・海のシルクロードは、中国と欧州、中国とアフリカをつなぎ、太平洋、インド洋、地中海を結ぶ絆となる。より包括的なグローバル化が実現しようとしている。伝統的なグローバル化は海から始まり、海から誕生し、沿海地域がまず発達し、内陸部は比較的立ち遅れ、地域間で貧富の格差が形成された。「一帯一路計画」では、西に向けた開放が推奨され、西部開発および中央アジア、モンゴルなどの内陸国家の開発をけん引し、包括的な発展の理念を実現する。