映画「ジョン・ラーベ~南京のシンドラー~」が9日夜、東京で上映された。写真は開場を待つ観客。
独・仏・中の合作映画「ジョン・ラーベ~南京のシンドラー~」が9日夜、東京・下北沢の北沢タウンホール(定員294名)で上映された。都心からやや離れた場所での上映となったが、多くの観客が訪れた。
▽ジョン・ラーベ研究家:何度見ても涙が止まらない
映画が始まると、観客は細かい部分も見逃すまいと、真剣な顔で映画に見入った。雑音などは聞こえず、空気がピンと張り詰めていた。日本軍に殺された中国人の死体が長江に捨てられるシーンでは、記者の右前方に座っていた女性が涙を流していた。日本軍による暴行の場面が続くと、前後左右から観客のすすり泣く声が聞こえてきた。
ジョン・ラーベ研究家の永田喜嗣さんは記者に対し、「この作品を何度も見たが、今日も最後のシーンで泣いてしまった」としたほか、「ドイツは第2次大戦中、数百万人のユダヤ人を殺害したが、その歴史を正視し、戦後から今に至るまで反省し続けている。これに対し、日本は南京大虐殺を含む侵略戦争について正視できていない。日本人は、これらの映画を通じて侵略の歴史をはっきりと知らない限り、歴史について語る資格がない」と語った。
観客の1人、大関さんは「南京大虐殺など、アジアの隣国に災難をもたらした侵略と殖民の歴史を理解し、正視しなければいけない。この点から見て、この映画は意義あるもの。また家族と一緒に見たい」と語った。
平野和子さん(83)は、映画の感想について、「ずっとこの映画が見たかった。今日やっと見ることができた。南京大虐殺の証拠は数多くあるが、今の日本の政治は右傾化しており、日本政府が南京大虐殺を否定しようとしていることには憤りを感じる。今、この映画が上映されることには重要な意義がある」と語った。