米上院情報特別委員会は9日、米同時多発テロ後に米中央情報局(CIA)がテロ容疑者に対して行った過酷な尋問手段に関する報告書を公表した。報告書は、CIAは議会と国民に活動を説明する際に真実の状況を隠蔽しており、被収容者に対する尋問過程は「ずっと残酷だった」が、米国民の生命を守り、テロ事件の発生を阻止するとの期待した効果は拷問では得られなかったと指摘した。報告書の全文は6700ページで、今なお秘密とされている。9日公表された500ページは報告書の要約と結論部分に過ぎない。5年間の時間と4000万ドルの費用を費やした同報告書は水責め、長時間単独幽閉、頭部を壁に打ちつける、死の脅しといったCIAの用いた尋問手段について、法律の認める範囲を大きく超えていると指摘。CIAによる被収容者に対する虐待の実際の状況は議会と国民に説明したものよりもずっと残酷だったとの認識を示した。(文:王義桅・中国人民大学国際事務研究所所長、国際関係学院教授。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
報告書の公表には政党間の争いという背景があり、CIAの行為も米国の全てを代表するものではないが、それでも人種差別、人権の虚偽という米国の真実の状況を反映している。オバマ大統領は報告書の公表後「米同時多発テロ後にCIAが取ったいくつかの行動は米国の価値観に反するものだ。被収容者への虐待行為は米国の価値観に反するのみならず、米国がさらに大きな範囲でテロとの戦いを行い、米国の安全上の利益を守るうえでの助けにもならない。そればかりか、こうした虐待行為は世界における米国の地位を極めて大きく損ない、同盟国やパートナーと自らの利益を図ることもさらに困難にした」との声明を出した。
ロンドンの中東関連新聞は「虐待スキャンダルは米国のいわゆる人権に対する皮肉だ。米国は常に人権を口にするが、その情報機関が拘禁する囚人に人権などなく、多くの被拘禁者は様々な虐待に苦しめられた。身の毛のよだつ拷問自体が米国が人権を尊重せず、人権を冒瀆していることをさらけ出している」と論じた。
米政府に人に知られたくない問題があるのは今に始まったことではない。CIAの行為も米国の行為を代表するものとは言い難いが、報告書が明らかにしたものは、表面的には国の安全と個人の自由との矛盾だが、実は「世界の人権よりも米国の利益が重要」という米国と世界との関係の矛盾だ。欧州人はフランス革命を振り返り「自由よ、汝の名の下でいかに多くの罪が犯されたことか」と言ったが、現在は「安全よ、汝の名の下でいかに多くの罪が犯されたことか」と言えよう。