米国防総省は21日、「2015年度国防権限法」に基づく初の「アジア太平洋海上安全保障戦略」報告を公表した。40ページの長きに及ぶ同報告は米国の「航行の自由行動」について弁解を行うと同時に、東中国海と南中国海での中国の正当な権益維持行動を歪曲することも忘れなかった。うわべは公正妥当に見える同報告は傲慢さと偏見に満ち、一方の肩を持つ真の姿を顕にしている。(文:張軍社・海軍軍事学術研究所研究員。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)
第1に、報告は米国防総省のアジア太平洋地域における海上安全保障戦略の目標は、海洋の自由の維持、衝突と威嚇の阻止、国際法・基準の遵守の推進だと公言している。実際には、米国防総省の主張する「海洋の自由」とは、米軍当局が自らの基準と判断に基づき、強大な海上軍事力によって他国の領海、排他的経済水域(EEZ)、さらには内水に侵入して実施するいわゆる航行の自由だ。報告は、2013年と2014年に米国の軍艦が他国の関係海域に侵入し、それぞれ19件と35件のいわゆる「行き過ぎた海洋主張」に挑戦したことを明らかにしている。米軍艦のこうした行動は本質的に米国の覇道と傲慢さの受け入れを他国に迫るものであり、国際法に合致しない。
第2に、東中国海問題で報告は1972年に米国が沖縄およびその他琉球諸島を日本に返還して以来、日本は釣魚島(日本名・尖閣諸島)に対して施政権を実施してきたと妄言を吐いたうえ、2012年の中国の釣魚島に対する日本政府の「国有化」についての不当な弁解に同意し、米日安保条約は日本の管轄する全ての領土に適用されるとわめきたて、日本の一方的な挑発行為に対する中国の正当な権益維持行為を歪曲している。報告はさらに身勝手で横暴なことに、米日が早くから防空識別圏を設けた事実は省みず、国際法と国際的に広く行われているやり方に合致する中国による東中国海防空識別圏の設定についてとやかく言っている。
第3に、南中国海問題で報告は米国は全ての関係国に対して南中国海における関係国の行動宣言の実行を求めると公言する一方で、黄岩島(スカボロー礁)海域で軍艦を使用して中国漁民をかき乱し、威嚇するフィリピンのやり方、および揚陸艦を派遣して意図的に座礁させる方法で中国の南沙(英語名スプラトリー)仁愛礁(アユンギン礁)の侵略・占領を企てるフィリピンの行いについては知らぬふりをし、さらには南中国海における関係国の行動宣言に違反して中国との紛争の国際仲裁手続きを一方的に進めるフィリピンの誤ったやり方を支持してすらいる。報告は中国が西沙(英語名パラセル)諸島、中沙諸島、南沙諸島の島や礁およびその海域を最も早く発見、命名し、主権管轄を行使し続けてきた事実を省みず、西沙諸島の領有権をめぐり中国とベトナムの間に紛争があると妄言を吐いている。報告はさらに1898年の米国とスペインのパリ条約、1900年の米国とスペインのワシントン条約、1930年の英米条約という3つの国際条約がフィリピンの領土を西は東経118度までとしており、黄岩島はその範囲に含まれない事実を顧みず、黄岩島の領有権をめぐり中比間に紛争があることを認めている。