「どうやら予想が外れたようだ」北京理工大学教授の王涌天委員は午後4時頃、取材を受けた記者の側に戻り、携帯電話を操作しながら「人間が負けるとは」とつぶやいた。王氏が意外だったことは、世界トップの棋士と称される李世石氏が、世界の注目を集めた囲碁の対局(初戦)で、人工知能に負けたことだ。王氏は「これは驚きだ。スティーヴン・ホーキング氏が指摘した通り、人工知能の脅威に警戒する必要がある」と述べた。科技日報が伝えた。
科大訊飛集団董事長の劉慶峰代表は、これを意外なこととはしなかった。劉氏は科技日報の取材に応じた際に、人工知能が勝つと断言していた。「長年の発展により、人工知能による囲碁の対局は理論上、問題がなくなった。特に近年のアルゴリズムのディープランニングにより、人工知能は数千万の棋譜を学び、実力を高めている」
中国科学院院士の潘建偉委員は「驚くには値しない」と述べ、いつも通りの落ち着きを示した。潘氏は、ルールがはっきりした問題を解く場合、コンピュータが人類に勝つはずであり、あとは時間の問題だと指摘した。しかし、これは完全なる敗北を意味するわけではないという。「人の理性に限界があるならば、知力にも限界がある。ロボットならばなおさらだ」
懸念する必要もなければ、過度に問題視する必要もない。コンピュータ国家重点実験室長の林恵民委員は、「今回の人工知能が勝利したことの意義を誇張するべきではない。一部の人工知能が処理するのは、測定可能な問題だ。囲碁や将棋などのゲームは、どれほど複雑であってもルールが決まっており、変化も限られている。計算データとアルゴリズムが一定水準に達すれば、コンピュータはいつかは人類に勝利する。しかし人には想像力など、測定不能な多くの領域が存在する。人工知能は勝利したが、プログラムを作ったのは人間だ。囲碁の対局で1度負けたからといって、コンピュータが人間に勝利したとメディアが宣伝するのは不適切だ」と述べた。
江蘇擎天信息科技集団董事長の辛穎梅委員は、「今年は人工知能元年と呼ぶことができる。AlphaGoの勝利は大きな影響を生む。国内の技術開発者もこれに追随し、人工知能の応用を、先進国を追いかける方向性とするだろう。5年ほどで、人工知能は私たちの生活を変えるだろう」と予想した。
どのように変わるのだろうか?バーチャルリアリティ(VR)技術を研究する王氏は、人工知能のVRへの影響について、「例えばヘッドセットディスプレイをかぶり、VRゲームの世界に入ることで、高度な知能を持つバーチャルの人間と交流できる。こうすることで、人は本当に第二の人生を手にすることができる」と話した。(編集YF)
「人民網日本語版」2016年3月10日