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中国は「匠の心」をいかに学ぶか ねばり強く細心に

人民網日本語版 2016年03月11日08:27

「匠の心」という言葉は、多くの人にとって自分には関係のないなじみのない言葉だったが、李克強総理が5日に行った政府活動報告の中で取り上げられた。ここから中国社会が匠の心をぜひとも必要としていることがわかる。「環球時報」が伝えた。

▽職人気質 日本の歩み

ステンレスボトルから便座、風邪薬、もてなしのサービスまで、中国人が日本に押し寄せる背景には、日本の匠の心の影がちらつく。

日本の作家・塩野米松さんは、「日本は職人の文化と伝統をもった国だ。これに親の事業を子供が受け継ぐ伝統が相まって、日本の企業は規模の大小に関係なく、企業が長らく存続発展することを願うケースが多い」と話す。統計によると、日本には200年以上の歴史をもつ企業が3100社以上あり、世界一だ。こうした100年の老舗の経営モデルは「規模の拡大や中味の拡充」を急がず、資本の蓄積や上場・マネーゲームを追い求めず、1つの商品や1つの技術を磨くことに専念するというものだ。当然のことながら、日本人は経営において消費者と息の長い「信頼関係」を築くことを重視する。

日本の老舗企業の多くはこうやって発展してきた。岐阜県は日本刀の産地で、中国の鍛造技術が日本に伝わった後でたくさんの工房が立ち上がり、古代の鍛造技術を引き継ぎながら各種の刀を次々に生み出してきた。現在は台所用刃物を製造している。ニコンのカメラはレンズに定評があり、これは第1次世界大戦後以来、ガラスレンズの研磨を手がけてきたことと関係がある。

▽効率と匠の心はぶつかることがある

品牌連盟(北京)諮詢株式有限公司の王永会長は西側諸国の匠の心について、「スイスは腕時計で有名だ。スイスの職人たちはかつては教会の大時計を手がけ、その後小さな時計や腕時計へと発展を遂げた。これは歴史の偶然というものだが、スイスの職人は大時計を作る時と同じように細心の注意を払って小さな時計や腕時計を作ってきた。これが脈々と続いてきた伝統だ。日本は資源が乏しく、浪費は許されないため、何事にも細かさを求めるようになった。ドイツとイタリアのプロフェッショナルの精神も匠の心であり、職人は自分の職業に誇りをもっている」と述べた。

だが職人たちはこれまでずっと歴史の表舞台にいたわけではない。工業化とグローバル化による衝撃を受けて、精巧な手仕事の技術が減少し失われつつある。塩野さんは著書「失われた手仕事の思想」で、伝統を引き継ぐ職人の置かれた厳しい環境を紹介している。

効率重視の現代社会が匠の心とぶつかるのはある程度やむを得ない。匠の心を尊重する日本でさえ、評価は分かれる。工業社会に突入した日本では、大量生産と高効率を達成した大企業しか生き残ることができず、市場競争の荒波の中で中小企業が次々に倒産するという現実がある。匠の心が技術に全身全霊を注いで、他の点をまったく顧みないなら、不景気の時代にはそぐわないものになる。匠の心が細かい点にばかり注意を向け、「簡素であることが最も美しい」という原則を忘れていると考える人もいる。

だが匠の心が工業大国で重視されていることには疑問の余地がない。日本の機械式時計の製造や精密加工などの分野では、多くの職人が十分な保護とふさわしい尊敬を受けている。経済という大きな環境が不景気で、日本の中小企業の倒産が相次ぐ中、日本のプロフェッショナルたちは中小企業を保護し、日本の「中核技術の発展パワー」を保護することを呼びかけている。

▽効率の最大化ばかり追求してはならない

米紙「ニューヨークタイムズ」の記者は、製造業は職人技術の「兄貴分」だといい、「オバマ政権は製造業に懸念を評し、製造業の再興によりイノベーションを促し、貿易赤字を減少させたいなどとしているが、まだ一歩を踏み出してはおらず、日々隆盛になる製造業が匠の精神をかき立てているとも言っていない。匠の精神は米国の自己イメージである、進取の気概に富み、革新に熱心で、どのような製品でも生み出すことができるというイメージを形作る極めて重要な部分だ」と報じた。

米国の学術関係者は、「米国の若い世代は手を動かす技術を育てることのできない家庭環境で大きくなった」といい、前出の記者は、「金融などの分野の給与が高いことが米国の匠の心を徐々に退行させた原因の一つ」という。「クラフツマン」を書いた社会学者のリチャード・セネット氏はドイツに学ぶことを呼びかけ、「ドイツ企業は、経済的観点であれ愛国の観点であれ、国内で質の高い労働者群を育成することの必要性を認識している。米国にはこのように時代をとらえる精神が欠けている」との見方を示した。

米国人の懸念に比べると、中国の匠の心を求める気持ちはより切迫したものだ。王会長は、「匠の心は本質的に着実で、よりよいものを求め、1歩ずつ着実に進むものであり、実際とかけ離れた高く遠い目標を目指すものではない。中国企業は浮き足立つことが多く、利益の最大化ばかり求める傾向がある。かつて海爾(ハイアール)は不良品の冷蔵庫を破壊して、匠の心を呼びかけた」と説明した。

中国ブランド戦略学会の楊清山会長(首席専門家)は、「匠の心は、実は誰もが知っているのだが、なかなかできないというものだ。欧州では、匠の心はよりよいものを追求することであり、こうした心を大切にしてきた。今のような機械化、電子化、情報化の時代にあって、匠の心をより強化し、伝統技術や伝統文化をしっかり守ることがぜひとも必要だ」と述べた。(編集KS)

「人民網日本語版」2016年3月11日

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室戸 桂一朗   2016-03-1258.157.98.*
日本では、盛んに「匠の心」「日本国産に世界が憧れる」等の自慢報道や自惚れ番組が、毎日にようにテレビで放映されているが、もともと日本の技術は中国から伝来したものばかりであり、中国の工芸や建築は、日本の常識をはるかに超えるものもある。日本では「日本人は世界一器用な民族でる」と報道されているが、もちろん、世界一器用な民族は中国だ。絵画以外でも、器用さは世界一だろう。また、習政権の科学技術、国産技術重視政策が実施されれば、科学や産業技術で世界を制するのも時間の問題だろうと思う。問題はその後であり、世界一になった中国国民が日本国民のように自惚れ、傲慢な民族にならないことを期待している。これは「匠」などよりもはるかに重要な問題だ。日本を反面教師とし、今から自惚れないための社会対策を考えておくべきだろうと思う。

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