スティーブン・ローチ氏 (撮影 辺紅)
世界第二の経済体である中国は、2016年の経済成長率目標を6.5%〜7%と定めた。これは世界にとって何を意味するのだろう?米エール大学シニアフェローで、モルガン・スタンレー・アジアの前会長であるスティーブン・ローチ氏は3月11日、自宅で人民日報記者の取材に応じ、「中国経済成長の世界経済成長への寄与度は依然としてその他の主要エコノミーの寄与度の総和を上回る」との見方を示した。人民日報が伝えた。
【記者】:世界経済成長の全体的な情勢について伺いたい。
【ローチ氏】:世界経済は今、困難な時期にある。世界金融危機から8年経つが、各国、特に先進国の成長が依然として不足している。米国、欧州、日本は危機のショックからいまだに回復せず、全体的な需要不足に陥っており、成長のスピードは依然として遅すぎる。
これらの主要エコノミーが行っている積極的な金融刺激策は功を奏していない。かれらは金融市場を刺激したが、需要と実体経済の顕著な改善には至っていない。
私は、世界経済の減速がこのまま続くのではないかと懸念している。今後数年間、世界の経済成長率が3%に達することは難しく、過去数年の平均である3.5%を下回ると見られる。あるいは2.5%を下回る可能性もあり、そうなれば新たなリセッション(景気後退)が起こる。こうした背景の中、中国が経済構造改革を推進し、できるだけ早く輸出型経済から消費型経済への転換を図ることは極めて重要と言える。
【記者】:米欧日など主要エコノミーの状態は?
【ローチ氏】:米国は貯蓄を増やし、支出を減らす必要がある。過去8年間の米国の経済成長率は平均1.5%、金融危機前の12年間の経済成長率は平均3.6%だった。金融危機がもたらしたバブル崩壊により、米国の消費者はいかにして債務を完済するかにより注目するようになった。米国の現在の個人貯蓄率は5%だが、20世紀最後の30年間の貯蓄率は9%に達している。つまり、今の平均貯蓄率は昔より低いということになる。米国がやるべきことは、消費者の家計のバランスシートに注目し、債務を完済し、貯蓄を回復させることだ。
日本は再びリセッションに入ろうとしている。いわゆる「アベノミクス」は効果が得られなかった。アベノミクスの3本の矢はそれぞれ「金融」「財政」「構造改革」に取り組むものだが、「金融」にばかり重点が置かれ、「構造改革」が進展していない。アベノミクス実施から3年間の平均成長率はわずか0.7%、その前の21年間の平均成長率は0.8%と、ほぼ変わっていない。少なくとも宣伝ほどの効果は得られなかった。