最近、一躍有名になって事業を成功させる「ネット有名人(中国語:網紅)」が増えた。国外でいえば、イタリアのファッションブロガー・キアラ・フェラーニさんは、毎日おしゃれなスナップ写真やコーディネートを紹介して多くのフォロワーを集め、昨年はフォーブス誌が選ぶ「世界を変えている30歳以下の起業家」にも選ばれた。一方、中国の今年一番のネット有名人と言えば、Papi醤だ。彼女は短い自作動画の中で、早口コントのような面白おかしいトークを披露して人気を博した。このほど、Papi醤の動画をめぐる広告枠のオークションが行われ、2200万元(1元は約17円)で落札されたという。人民日報が伝えた。
ネット有名人が誕生すれば、「ネット有名人ビジネス」が生まれる。上海の雑誌「咬文嚼字」の定義によれば、ネット有名人とはネットユーザーからの支持を集め、人気になった人を指す。こうした人気と注目度を生産力や購買力につなげ、収入を生み出すことができれば、それはネット有名人ビジネスと言えるだろう。ファッショニスタであれオピニオンリーダーであれ、あなたの意見を支持し、評価する人が多くいればネット有名人ビジネスという「急行列車」に乗ることができる。
ネット有名人がここまで人気になったのは、各国の景気低迷に伴う「リップスティック効果」の影響もあるのかもしれない。実体経済が低迷すると、非実体経済である文化などの産業が発展のチャンスを得やすい。米マッキンゼー・アンド・カンパニーの研究報告によれば、ファッションやぜいたく品業界の業績は好調で、ハイテクや通信などの高成長業界さえも上回っているという。消費者は家や車は買えないが、ネット有名人への注目は、口紅を買うようなもので、安いが気持ちが安らぎ、気分が上がるのだ。
ネット有名人にはそれぞれ、個性・創意・ユーモアといった共通のレッテルが貼られているが、ネット上に生息する彼らを左右するもっと重要な要素は、「良質なコンテンツ」だろう。ネット有名人は常に注目されているが、この注目度を金に換えることこそが彼らの最終目標だ。ネット有名人の営業モデルを簡単に言えば、膨大なフォロワーを活かしたターゲットマーケティングだ。キアラ・フェラーニさんはシューズブランドを立ち上げたし、自らのジュエリーブランドを立ち上げたネット有名人もいる。また、商品のイメージキャラクターを務めたり、EC企業との提携などで利益を得るネット有名人も多い。注目度を生産力に転化するには、投資とビジネスのセンスが必要なだけでなく、ネットワーク時代にいかに需要を刺激するかを熟知していなければならない。もともと買う気がなかったが、ネット有名人が推薦する商品は買う気が起きるというケースは多々ある。マーケティング学から見ると、これこそが新たなニーズの創造だ。