SF市場の産業化の兆し
イサクソン助教によると、中国と米国のSF産業の主な違いは、出版権や著作権の保護、商標法にある。米国のSF企業は本を売るだけでなく、映画、漫画、玩具、ドラマなど、エコシステム全体を統括している。一方、中国版权保護のシステムはまだ整っていないため、中国の企業もリスクを冒してまで、特定のキャラクターやストーリーに基づいたSF関連商品を打ち出そうとしない。
日本では、アニメや漫画、ゲームの連携は進んでいるものの、SF小説と映画・テレビ産業のコラボは難しいという点は中国のケースと似ている。
立原氏は、 「恐らく、小説の中の想像上のものを映画やドラマにするのは難しいのだろう。もちろん、資金の問題もある」とし、「三体」などのSF小説の映画化がブームになっていることについて、「非常にうらやましく、そこから学ぶ価値がある。小説を映画化することで、SFの魅力を元々作品に興味のなかった人にも伝えることができる」との見方を示している。
イサクソン助教は、映画版「三体」に期待しているほか、「米国なら、『三体』は映画化だけでなく、ドラマ化されたり、絵本やおもちゃになったり、ファーストフード店のマーケティング戦略にも使われるだろう」としている。
中国のSFの海外進出の前に立ちはだかる言語の壁
イサクソン助教は、「中国の本屋に行くと、どこでも中国語に訳された外国小説が並んでいるスペースがあるが、米国の本屋には英語に訳された中国の小説が並ぶスペースはない」としている。
また、「確かに、言語が、中国のSFが世界に進出するための壁となっている。不幸にも、それは米国の読者の問題であって、中国語の問題ではない。米国の読者の多くは中国の小説を読むことができない」とイサクソン助教。さらに、「中国の読者が米国のSF小説を読むほうが、米国の読者が中国のSF小説を読むより容易である。過去100年において、中国人が外部の世界から学んだことは、世界が中国から学んだことより多い」と語っている。
同じく東アジアの国である日本も同様の課題に直面している。立原氏は、「中国語や日本語の作品が英語圏に進出するためには、作品を英語に翻訳する優秀な翻訳者が必要となる。翻訳は単に単語を置きかえるということではない。翻訳の過程で、小説の文化的背景やテクニックを柔軟に活用しなければならない」と指摘している。
「三体」などの小説がヒューゴー賞を受賞した背景では、米国の中華系SF作家である、劉宇昆氏が翻訳を務めた功績がある。米国の翻訳家のウィリアム・ウィーヴァー氏は、翻訳を『アートパフォーマンス』に例え、「原作は楽譜で、翻訳は演奏家」と表現している。劉氏は、「私は、作家の本来の意味に忠実であることを根底にし、原作という『楽譜』をさまざまな楽章で演奏している」と語っている。(編集KN)
「人民網日本語版」2016年9月26日
このウェブサイトの著作権は人民日報社にあります。
掲載された記事、写真の無断転載を禁じます。
Tel:日本(03)3449-8257
Mail:japan@people.cn