2. 文学部門審査委員の所感
この度「第18回日中友好中国大学生日本語科卒業論文コンクール論文審査会」が天津外国語大学で行われ、ゲスト審査員として参加させていただき、しかも専門家の先生方と一緒に審査できて、大変光栄に存じています。天津は初めてなので、主催者側及び開催者側の皆様の暖かいおもてなしに対して、心から感謝の意を申し上げたいと思います。
文学部門の応募論文は総計13本で、どれも各大学の最優秀な論文として応募したので、全体的には規範性の高い論文が多かったと思います。そして、論文内容から見ると、古典文学に関するのが1本しかないことから、日本語科の大学生は古典文学より近現代文学にもっと興味を持つ傾向が覗けるのではないかと考えられます。
この度、厳しい審査を通し、一等賞と認められたのは「新聞小説としての『三四郎』」です。本論文は先行研究をよく把握した上で、『三四郎』がそもそも新聞小説であるという事実に焦点を絞って、小説の中に仕掛けられた新聞小説の要素を分析し、読解することを試みました。これまでの先行研究にあまり言及されていない角度から論述したのは本論文の創造性があるところだと思われます。それに、綿密な論証、関連する内容をちゃんと纏めて付録として巻末に付加されているこどなど、本論文の規範性が高いことはよく示されています。
文学についての論文は作家、作品論で行われるのが普通ですが、今度二等賞と三等賞を受賞した論文は物語論という文学理論を活かし、空間や語り手の他者意識といった角度から作品テキストの解読を試みて、それなりの結論を得たのは印象的でした。物足りないところはないわけではないですが、単純にテキストを解読するより、ある文学理論を利用し、自然にテキストの解読と結び、自分なりの結論を出すのはもっと説得性があるのではないかと思います。
以上、審査所感として述べさせていただきました。どうもありがとうございます。
(湖南大学 曹莉)
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