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第18回日中友好中国大学生日本語科卒業論文コンクール審査委員の所感 (6)

人民網日本語版 2018年11月22日14:05

6. 言語部門審査委員の所感

「第十八回日中友好中国大学生日本語学部生卒業論文コンテスト」の最終審査が、2018年11月2日から3日にかけて、天津外国語大学で行われた。今年も、筆者は日本言語部門の審査委員として参加した。

まずは、やはり十八年も継続された当コンテストをずっと支持していただいた日中友好市民倶楽部の小野寺健理事長に心から感謝を申し上げたいと思う。中国国内では、日本語教育関係にかかわる多くのコンテストやスピーチ大会、作文コンクールなどが実施されているが、しかし、十八年間も一回も欠かすことなく続けられているプログラムとしては、このコンテストは唯一ではないかと思う。特に、2012年以降、中日関係が国交回復以来最悪の状況に陥ってしまった時期に、多くの日本関係のプログラムが何れもやむを得ず停止したり、中断したりした局面の中で、このプログラムだけが滞りなく続いてきたことは、やはり主催者側の勇気と献身的な努力の賜物だといわざるを得ない。

そして、このコンテストはそれ自身が続いているだけでなく、それ以外にも大きな影響があった。筆者の所属する北京日本学研究センターは、大学院修士課程以上の大学院コースだが、正にこのコンテストの刺激を受けて、何か全国の日本語修士課程のレベルアップにつながるような事業ができないかと考えて、2008年から「中国日本学研究優秀修士論文“カシオ杯”コンテスト」を実施し、今年で十一年目になり、全国的な影響力も高めてきたが、これもひとえに「日中友好中国大学生日本語学部生卒業論文コンテスト」からノウハウややり方を学んできた結果だと思う。その意味でも小野寺健理事長に感謝を申し上げたいと思う。

ところで、今年の推薦論文の専攻から見れば、毎年と同じように言語部門が21本で、最も多い分野になっている。これは、やはり日本語専攻の各大学の教育現場第一線では、日本語学の論文が指導できる教師の数が多く、卒業論文の時期になると、必然的に日本語専攻とする論文がほぼ毎回第一位を占めてきた理由ではないかと思う。そして、日本語学関係とはいえ、研究の内容から見れば、また、日本語そのものの研究(5本)、コミュニケーション研究(6本)、翻訳研究(5本)、日本語教育研究(3本)、中日対照研究(2本)など、かなり多様化しているとわかる。

これらの論文を審査した結果、揚州大学から推薦された論文「『連語可能性』説に基づいた類義語分析―『切符』『券』『チケット』―」が一等賞に選ばれ、河南師範大学から推薦された論文「『試す』と『試みる』の対照研究」が二等賞に選ばれ、西安外国語大学から推薦された論文「身体語彙慣用句の中日認知対照研究」が三等賞に選ばれた。

学生の卒業論文を指導し、また長年来このコンテストの審査にかかわってきた者として、ここで特に強調したいのは、学生の卒業論文としては、もちろんオリジナリティも重要なことだが、一外国人の学生が卒業論文の段階で大きなオリジナリティを期待するのが無理な面もあり、むしろ、しっかりとした方法論に基づき、独自に研究対象に関して徹底的に調べ、その上自分なりに分析したというプロセスを十分に反映された論文のほうが評価されるべきではないかと思う。そして、今回各賞に選ばれた論文は、いずれもその意味で十分にレベルの高い論文だと考えられる。

ほかには、もちろん研究分野が多様化しているのがとても嬉しいことだが、まだ研究の蓄積が足りないというせいか、論文のタイトルなどを見ると、良い論文ではないかと期待したが、読んでみるといま一つ期待とおりの内容がなかったのがいくつかの論文があった。

例えば、日中の新聞記事における伝達表現について比較研究を行った論文があったが、しかし、中身を見ると、結局事実の羅列があったが、何故双方の伝達表現に主観性の差が見られたかについての分析がほとんどなかった。また、日本語教育関係の研究では、中国における日本語外来語教育の現状に関する研究もあったが、分析もあり、テストも行っているが、しかし、データーとしては一種類の教材に限ったというのも、物足りないという感じがする。それから、近年来翻訳関連の研究も増え、これは翻訳や通訳関連の教育が展開されている成果ではあるが、しかし、異なる訳本の違いを並べたりするだけでは、やはり研究としては成り立たないと思う。また、今回の推薦論文の中に、中国高等教育機関における日本語教育研究の現状に関する論文が1本あったが、学生の卒業論文には、このような内容はあまり提唱しないほうがいいと私は思う。

入賞論文についてまとめたところで申し上げたように、学生にはやはりしっかりとして研究対象と問題点のある内容をもとに、先行研究の勉強を通して、何が解決されて、何がまだ問題があるのかをしっかりした問題点を把握したうえで、科学的な方法論に基づき、独自に対象となる研究データーを調査し、分析し、自分なりにその解決方法をまとめるような論文を推奨したほうがいい。つまり、学生に卒業論文を作成するプロセスを通して、問題を発見し、その問題を分析し、更に解決していく能力を身につけてもらうのが、卒業論文作成の最大の目的ではないかと思う。

もちろん、以上のような問題はまだ存在するものの、ここ数年来大学生卒業論文のレベルが年々上がっているのがわれわれ審査委員一同の共通認識である。その中で、近年来教育現場の各大学と先生たちの努力は根本的な原因であるが、このコンテストがそれに対して大きな推進力になっているという事実も否めないと思う。今後はこのコンテストがますます発展するのをお祈りし、筆者の審査所感とする。

(徐一平)

「人民網日本語版」2018年11月22日


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