実のところ、日本社会でも数年前から「高学歴低所得者」の人が増え続けている。中国の「蟻族」現象が日本にも起こっており、「高学歴低所得者」は、中日両国の社会に共通しした現象となった。さらに掘り下げて見ると、「蟻族」の背後には、両国ともに直面している、時代が生んだ構造上の問題が見え隠れする。
日本の高齢化社会は、若者たちに重い負担を強いている。今の日本の青年たちは、自分の将来の生活について、言いようのない不安を抱いている。中国の高齢化は、今のところ日本ほど深刻ではないが、「未富先老(豊かになる前に老いる)」が現実になるのではないかという憂慮が、世間で熱い話題となっている。中国では2013年、高齢者人口が2億人の大台を突破、高齢化レベルは14.8%に達した。今後、中国の高齢化はますます加速、今世紀半ばにピークに達し、60歳以上の高齢者人口は4億人を上回り、総人口の30%を占めると見込まれている。中国の青年世代に押し寄せる圧力は極めて重い。これらの問題に直面している中国人青年と日本人青年には、多くの類似点がある。
「蟻族」に端を発する、中日両国の青年が直面するこれらの社会問題は、我々にどのような啓示を与えているのだろうか?各国の青年が、世界のグローバル化とネットワーク化という大きな潮流を目の当たりにし、それに巻き込まれている状況のなかで、ひとつの時代に共通した問題が、異なる国家・地域で同時に浮上している。この現実は、両国関係を考察するにあたり、国家や民族としての立場で考えるだけでは不十分で、このような時代に生きる者としての視点も重要であることを、我々に気付かせてくれる。改革開放以来30年あまりの巨大な変化によって、中国の青年は、過去のどの世代の人々も経験したことのないような飛躍的な成長を余儀なくされた。彼らは、時間軸上では前世代の青年とは全く異なる経験をしている。だが、同時に、グローバル化とネットワーク化によって、各国の青年は、空間的な横のつながりを持つようになった。
今の中日両国の青年は、個人の成長が重視される時代に生き、共通した問題に直面している。これによって、両国の青年には、非常に強大な「共感」という基礎が作られた。ネットワーク化とグローバル化の大波が押し寄せる昨今、流行文化を築き上げることは、世界中の青年の共通の楽しみとなった。日本のアニメ・漫画や中国の微信(WeChat)は、国境を越えて、両国青年の共通した成長の拠り所となった。中日両国は、極めて深淵な文化交流史を有しているが、このような繋がりは、過去のいずれの時代にも見られなかった。