次に消費を見ると、近年、電子商取引(EC)、情報経済などの急発展に伴い、中国の民間消費は安定的に上昇し、消費は今や経済成長をけん引する最も重要な力となった。中国国務院発展研究センターマクロ経済研究部の余斌部長は、「比較的高い貯蓄率、物価の下落、情報関連消費など新たな消費形態の急速な伸びといったプラスの要素を考慮すると、2015年の消費財小売総額は11%前後の伸び率となり、昨年とほぼ同じ水準を保つと見られる」と指摘する。
最後に投資を見ると、重工業などの分野では過剰な生産能力の淘汰が今も進んでいるが、企業のモデルチェンジ・アップグレードが加速するに伴い、製造業企業の投資も安定的に回復している。
このほか、中国の都市化率は現時点でまだ55%であり、基本的な都市化実現の目標値である70%にはまだ大きな隔たりがある。また、都市・農村部の世帯収入が向上するに従い、改善型住宅のニーズが絶えず生まれると見られる。中国が不動産政策を講じる余地も比較的大きい。これらの要素はいずれも不動産市場の安定的かつ健全な発展に有利となる。3月、分譲住宅の販売面積は1.6%減少し、1-2月と比べて14.7ポイント減となった。分譲住宅の販売総額も2%減少し、同13.8ポイント減となった。
中国経済、速度ばかりを追い求めてはいけない
経済失速の懸念が生じている背景には、人々の「速度を求めるがゆえの焦り」がある。しかし、新常態(ニューノーマル)に入った中国経済にとって、そのような高度成長は「達成できない」、「耐えられない」ものであり、「必要がない」ものなのだ。
「達成できない」というのは、潜在的成長率の鈍化は必然的なすう勢だからだ。潜在的成長率は労働・資本・全要素生産性の3つの指標に基づき決定される。まず労働を見ると、2012年、中国の15-59歳の人口は初めて前年を下回った。これは、社会全体の労働投入量が今後、徐々に減少することを意味する。次に資本を見ると、被扶養人口の増加、扶養支出の増加、貯蓄率の減少により、投資に回せる資本の増加率は減速すると見られる。最後に、効率性を示す指標である全要素生産性も、短期間内に大幅な向上を実現するのは難しい。