また全パートナーは、「最近、80歳過ぎのお客様が1950年に作製した洋服を修理に出した。これは一番古いケースではなく、1932年作製の洋服を修理したこともある。どれほど古い時代のものでも、オーダー時に記録した情報は保存してある。チャールズ元首相はうちの店の顧客で、若い時に作った軍服を今でも店に保存している」と話す。
▽日本刀制作の伝統:千年の歴史をもつ技術を伝承
炉から真っ赤になった鉄の塊をハサミで取り出す。鍛冶師の山田佳孝さんが慣れた手つきで鉄のハンマーで鍛錬を始めると、辺りには火花が飛び散るが、山田さんは防護の類を一切身につけていない。山田さんは、「刀を作って20数年になり、火花がどうやって飛び散るか知っているので、少しも恐くない」と言い、後ろに下がる記者を見てほほえんだ。
今年44歳の山田さんは、京都の金高刃物老舗・金高の鍛冶師。金高は京都の繁華街にあって、それほど目を引く外観ではないが、200年以上の歴史をもつ名店だ。日本では鍛冶師の起源は12世紀頃にまでさかのぼり、千百年のわたって代々の鍛冶師が鍛錬を積み重ね、独特の日本式刀制作技術を作り上げ、現代に伝えてきた。
日本刀の大きな特徴は、峰は軟鉄、刃は鋼鉄という具合に材質の異なる原料を溶接して接合していることだ。そのため温度のコントロールを厳格に行う必要がある。山田さんの工房には温度計がなく、炉の温度はすべて山田さんの目によってコントロールされている。「炉の中の鉄の塊の色を見れば、温度はわかる。炉内の鉄の塊が一定以上の温度になると、温度変化で色の違いが極端に少なくなる。温度の把握で鍛冶師のレベルが試される」という。
山田さんは鍛冶師の家に生まれ、小さい頃から6代目の父親に刀制作の手ほどきを受けてきた。20歳になった年に、父親は技術を継承させると決めたが、入門から3年間は木炭割りなど他の仕事ばかりさせられていた。