トムソン・ロイターはこのほど、世界の企業の革新力ランキング「Top100グローバル・イノベーター」を発表した。日本企業は40社がランクインし、米国の35社を上回って国別トップとなった。中国大陸部の企業は1社もランクインしなかった。筆者は、このランキングは基本的に、世界の企業の「革新力」の概況を反映したものと考えている。(文:松野豊。清華大学・野村総研中国研究センター理事、副センター長。環球時報掲載)
日本企業の「革新力」の高さの原因は、1960年代から80年代に日本経済が急成長を果たした原因と相似している。官民が協力し、研究開発に全力で取り組んだことである。日本政府は、基礎産業の国際競争力を強化することが、経済の持続的発展を実現するのに欠かすことのできない要素だと十分に認識している。
日本企業は、研究開発投資の主体である。日本経済の高度成長期には、総研究開発費の75%は民間企業が担った。民間企業の研究開発に対する政府の支援は2%足らずだった。当時、米国政府はすでに、研究開発資金の30%を企業に提供していた。1980年代の政府支出に占める研究開発経費の割合から見ると、主要先進工業国の中では日本が最も低い。
とりわけ中小企業は、日本の研究開発力を高めるのに大きく貢献した。1970年代、企業の研究開発費率(売上高に占める研究開発費の割合)はわずか約1.5%だったが、中小企業の研究開発費率は大企業と変わらなかった。1980年代以降、日本の大企業は研究開発費率を高め、現在は3%から4%に高まっている。積極的に研究開発を進める中小企業もこの割合を2%前後に保っている。
日本企業の「革新力」(研究開発力)はどこから来るのか。第一に、日本の研究開発の多くは民間を主体としており、市場の変化に対して敏感であるため、商業的に成功する確率が高い。第二に、業界団体がしばしば革新の中心となり、各種の技術やその研究開発者のデータや情報を持っており、評価やフィードバックの活動に力強い支えを提供している。第三に、研究開発体制が中長期の目標を据えている。日本企業は往々にして、詳細な革新の目標と計画を制定し、グループごとの取り組みを進めており、持続性と自己調整能力が高い。第四に、研究開発の物理的環境が優れている。日本の大学と企業の研究機関はいずれも、機械を適切にメンテナンスし、清潔や秩序を保つことができるために、測定の誤差が出にくい。これは新興国の研究者がおそろかにしやすい面である。第五に、中小企業を主体とした「技術サービス業」が発達している。筆者の修士論文は、あるサービス企業に採用され、複雑な実験機器が特別に設計され組み立てられた。