小島氏などの専門家は、科学研究の成果の実用化が進んでいないというのが関西の問題であり、今後その面で大きな努力が必要と指摘する。関西は、健康・医療、環境エネルギー、航空機、人工知能を今後の柱となる四大産業に指定しており、その4分野において多くの科学研究成果も上げている。しかし、コスト削減などの課題に直面しており、実用化が進んでいない。
金氏は、「特許出願件数や論文の被引用数は、テクノロジーのイノベーションの過程で生まれ、最終的に生まれるものではない。最後に生まれるものは、企業が資金を投じて研究開発を進めた後に得られる利益だ。そのため、研究開発に資金を投じて、その成果を上げるというのは、テクノロジーのイノベーションにおいては前半部分を占めるにすぎず、後半部分で利益を上げなければならない」と指摘する。
そして、「現在、関西は多くのテクノロジーパークを設置しているものの、それらのパークを、政府だけで運営していくことはできず、ベンチャーキャピタルを呼び込まなければならない。政府主導のイノベーションは往々にして効率が悪いのに対して、ベンチャーキャピタルが関心を抱いているのは効率と費用対効果だ。関西の若者の起業意欲は強く、地元にテクノロジー成果もある。それなのに資金が足りていない」と分析する。
その他、イノベーションは大きな富をもたらすものだが、関西には今のところ、イノベーションにより大成功した前例がまだない。金氏は、「日本のベンチャーキャピタルは少しずつ力を発揮し始めているが、まだ、大きな勢力とはなっていない」との見方を示す。
モデル転換に向けた戦略の実行性に懸念
関西企業の生態環境にも多くの非難が集まっている。日本経済は大企業が主導権を握っているものの、大企業で形成された経営体制が、方向転換の足かせとなり、思うようにそれが進まない原因となっている。金氏は、「例えば、日本の車載電池の研究開発は、早くに成果を出した。しかし、電動自動車産業はまだ形成されておらず、その原因は大手自動車メーカーのアクションが遅いからだ。一方、市場の触覚は敏感で、科学研究成果を持っている小企業は産業化、市場化するための資金を得ることができない。小さなイノベーション企業が大きく成長することを阻んでしまう生態環境が、関西や日本の多くの地方経済にとっては大きな問題となっている」と指摘する。
大阪市立大学大学院創造都市研究科の李捷生教授によると、関西経済を復活させるため、自治体や主な工商団体は、▽大規模交通インフラプロジェクトを着工させることで、地価を上昇させ、不動産開発を促進し、人や物、資金などがそこに集まるようにし、地域経済の活力を刺激する▽空港や観光施設を整備するほか、25年の万国博覧会を招致して観光業を盛り上げる▽「産学官連携」のメカニズムを強化して、四大新興産業(健康・医療、環境エネルギー、航空機、人工知能)の発展を推進する―――という三大成長戦略に期待を寄せている。
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