よいペンを生み出せるかどうかが重要だろうかとたずねる人がいるかもしれない。中国のペンの質がどんなに高くても、ブランドの力がどんなに強くても、数千万本の筆で航空機にとって替わることができないのが事実と思う人がいるかもしれない。
▽ペン製造という目立たない産業を軽視してはならない
ペン製造業は小規模な産業だが、直面する問題はさまざまだ。品質水準がバラバラ、ニセ物商品・粗悪品が多くて困っている、ブランドの価値が高まらないなどで、これは多くの工業・産業が直面する問題と同じだ。その背後にあるものは、国の工業の総合的水準だ。使いやすいペンを生産しようと思うなら、本体の材料によいステンレスを使わなければならず、インクの安定性と環境保護性に配慮しなければならず、生産設備にも精度が要求される。
かつて中国の工業が大きく発展した際、ペン製造などの軽工業が先遣隊となり、パイオニアとなって、世界にメードインチャイナを知らしめ、工業の発展により大量の外貨がもたらされた。そして今、中国製造業は大から強への転換の途上にあり、ペン製造などの軽工業は産業の技術的基盤がしっかりし、市場での経験も豊富なことから、再び突破口となり、牽引役になろうとしている。
5年前にペン製造業の大から強への転換について語ったなら、それは現実とかけ離れた高望みだったかもしれない。当時の中国はまだコア技術の多くを掌握しておらず、質を決定づける重要部品のペン先やインクといったハイエンド製品は依然として輸入頼みだった。第12次五カ年計画(2011-15年、十二五)期間中、国の科学技術支援プロジェクトの後押しを受けて、ペン製造業の技術が急速に進歩し、2つの新しいペン先、3つのインク、精度の高いペン先加工機械の国産化が実現した。ニードルポイント水性ボールペンでは、中国の技術水準は一連の国際的有名ブランドをも凌ぐ。ここからわかることは、中国のペン製造業はすでに大から強への転換の基礎を備え、モデル転換とバージョンアップのタイミングがやって来たということだ。
モデル転換とバージョンアップにあたり、ペン製造業にとって最大の制約は技術ではなく、品質がすべての問題というわけでもない。主にブランドに制約されているといえる。一連の国産ブランド、たとえば晨光、白雪、英雄、真彩などは国内でも一定の知名度があるが、主に中級品・低級品市場に集中し、国際的知名度が低く、ブランド価値は低く、製品の品質を完全には体現できていないブランドもある。こうしたことにより、よいペンでもよい価格がつかず、メーカーは国際競争で損ばかりし、輸出はOEM(相手先ブランド名製造)がほとんどだ。