ご飯に対して特別な感情を抱いていたため、小さい頃から村嶋さんはご飯を炊くのが好きだったという。1963年の開店以来、村嶋さんは伝統的な炊き方にこだわり、電気炊飯器ではなくかまどを使ってご飯を炊いている。50年以上の試行錯誤を経て、ついに繊細で複雑で流れるような「茶道」と匹敵する炊き方の技術を確立していった。かまどの前で上下する手の動きは傍から見ていても無駄が無く、感嘆を禁じ得ない。
「ご飯を炊く場合の秘訣は一に水、二に水、三にも水」と村嶋さんは言う。質の良い白米のほかに、村嶋さんが最も大事にするのが水で、おいしいご飯の「魂」だという。村嶋さんがお米を炊くのに使う水は大きな甕に入れて、良質の木炭を入れた状態で一晩おき、水の中の塩素やそのほかのニオイなどをすべて取り去る。そうしてから村嶋さんは片手にアルミニウムの鍋を持って少しずつ鍋の中に水を入れていく。水を加えたらすぐに蓋を閉めて、火を起こし、ご飯を炊く作業が一気に始まる。