水穿石珈琲館
北京在住日本人の間では、故宮を起点に北京の西と東のどちらに住むかでライフスタイルが大きく変わると言われている。もともと東は早くから外国人に開放されたエリアで、外国人向けのショップやレストラン、マンション、各種サービスなどが比較的充実しているのに比べ、西はより地元密着型地域と言えるからだ。
2006年の入国管理局のデータによると、北京に常住する外国人人口は約11万人、うち最も多くの外国人が東に位置する朝陽区に住んでいる。また、別のデータによると、外国人の70%が朝陽区に居住しているという。日本人もしかりで、日系企業や日本大使館、日本人学校などが東に集中しているため、日本人駐在員の大多数が東に居住している。
一方、西に位置する海淀区は、IT企業が集まる中国のシリコンバレーと呼ばれる中関村を中心にした発展目覚しい新興ビジネス地域だ。それと同時に、北京大学、清華大学など70を超える大学・研究機関が集中する文教区でもある。教育熱心な地元の中国人には非常に人気の高い居住エリアだ。その中関村のすぐ南側に、中国を代表する名門校、中国人民大学がある。
中国人民大学は国家重点大学の1つで、2012年度中国・大学ランキング(中国人民大学高等教育研究センター版)では、北京大学、清華大学、復旦大学に継ぐ4位にランクインしている。
この中国人民大学内にあるカフェ「水穿石珈琲館」を北京のお気に入りとして推薦してくれたのは、着付けやピアノ、音楽教育のリトミックを教える先生として、又10歳と8歳の2児の母親として忙しい日々を送る五十嵐綾子さん(40)だ。
――ちょうど今の家に引越してきた頃、家の周りを散歩していたらたまたま人民大学を通りがかりました。中に入ってみようと大学内を歩いているときに、偶然このカフェを見つけたんです。当時は、北京の西エリアにカフェが非常に少なかったので、夫と一緒に「あぁ、カフェだ。これで好きなときにコーヒーが飲めるね」と喜び合ったのを覚えています。