最後に。子どもの感覚は純粋な分とても敏感です。彼らは正しいこと、あるべきこと、誰が自分のことを考えてくれている人かを恐ろしいほどきちんと見抜き、嗅ぎ分けています。そのことをまずは大人が知るべきです。迎合すべきだというのではありません。彼らを人として扱うべきだと言いたいのです。私自身「子どもなんだから」「子どものくせに」という環境下で育ち、私の中にもどこかで子どもを人として扱わないような感覚がありました。でも、日々子どもと関わる中で、彼らは大人よりももっと純粋で強い恩義を持っていることに改めて気が付きました。大人が本当に彼らのために動けば子どもは必ず何かを返してくれます。中国でも共通して味わうことができたこの喜びは私に新しい教師観を与えてくれました。日本語教育をとおして子どものために何かができればいいと思って青年海外協力隊に参加しましたが、1年半の時間を振り返れば私自身の益になることばかりでした。「ボランティア活動」の不思議はここにあります。出逢ったすべての中国人が「日本でのいい生活環境や給料条件を捨ててここに来て、仕事をして何の意味があるのか?日本に帰ったら厚遇されるのか?」と聞きました。確かに表面を見ればそうかもしれません。でも来なければ、子どもたちの成長や笑顔を見ることはできませんでした。自分の教師観を新たにすることもできませんでした。開発の進んだこの国でも、誰かのために「ボランティア活動」する人が一人でも多くなりますように。
平成25年度1次隊 青年海外協力隊員 日本語教師 十川孝子
「人民網日本語版」2015年4月29日