ただし、双方には違いもある。日本はかなり早くからジャカルタ-バンドン高速鉄道の建設に強い興味を示しており、インドネシアにも何度もフィージビリティスタディと関連計画を提出してきた。日本は特に2008年前後、インドネシア政府と何度も交渉を重ねていたが、インドネシア政局の変動などにより立ち消えとなってしまった。また、日本側は4500億円程度(約37ドル)を年利0.1%で融資する条件を提示しているが、これは中国側の条件(55億ドルを年利2%で融資)よりも優れている。さらに日本側は高速鉄道の耐震性をアピールしている。
一方、中国側にも有利な要素が2つある。まず、インドネシアのジョコ大統領が3月初めに訪中した際、両国は「ジャカルタ―バンドン高速鉄道建設協力に向けた覚書」に調印、中国発展改革委員会の徐紹史委員長が8月初旬にインドネシアを訪問した際には「ジャカルタ―バンドン高速鉄道計画の実施に関する協力枠組み」に調印した。これらは国家レベルの協力枠組み協定だ。
次に、中国は完成時期を2018年竣工予定としているが、日本は2023年竣工と、中国よりも5年遅い。この点から見れば、中国のほうが建設費を節約していると言える。日本側の価格的な優位に対しては、中国も計画の調整を行い、競争力のある政策を打ち出している。
南開大学日本研究院の劉雲客員研究員は、「中日双方にそれぞれ強みがある。日本はインドネシアなど東南アジア諸国で長期にわたりインフラ・鉄道プロジェクトを担当してきた。その技術、プロジェクト施工、前後期の流れなどは比較的完備されている。英国や東南アジアなどの鉄道プロジェクトでは、これまで日本が受注を獲得するケースが多かった。しかし中国にも後発の強みがある。鉄道製造大国の中国は、コスト面で優位性を持つ」と指摘する。
実のところ、中日両国は計画を何度も改善するなど、どちらも十分な誠意を見せており、ジョコ大統領はどちらを選ぶべきかのジレンマに陥っている。駱永昆氏は「インドネシアが第三者機関を顧問として招き、評価を行ったのも、このことが原因だろう。つまり、直接どちらかの『恨みを買う』のを避けるためだ。第三者機関はフランスとドイツの専門家からなり、公正な結果が示される」と指摘した。