2015年7月に明らかになった東芝の会計問題は、泣き面に蜂のような騒ぎとなった。長年にわたって財務の虚偽記載を続け、利益の不正計上によって見かけの業績を保っていたという事実は、東芝の信用を著しく損なった。日本証券取引等監視委員会はすでに、東芝に73億7350万円の課徴金の納付を求める勧告を行っている。日本企業に対する過去最高の罰金となる。
国際金融危機に見舞われた2008年度、東芝の赤字は3988億円に膨らんでいた。もしもこの時に斜陽産業の分離を行っていれば、「第二の春」を迎えることができたかもしれない。だがその機会は失われてしまった。2014年度までに様々な努力を経て、東芝の赤字は378億円にまで下がったが、2015年度の損失は上述のように過去最高の5500億円にのぼった。東芝はもはや粉飾によって無事を装うことはできず、生き残ることができるかさえもが問題となっている。
東芝は、資産の売却を迫られ始めている。インドネシアに保有していたテレビと洗濯機のメーカーはすでに、中国のスカイワース(創維公司)に転売されている。今後は、東芝のパソコン事業は富士通と合併し、白物家電はシャープに売却される可能性が指摘されている。東芝の今後の中核事業は、半導体と原子力発電となる見込みだ。
こうした措置にもかかわらず、東芝の未来は依然として楽観を許すものではない。推測によると、2016年度に期限を迎える東芝の融資と債務は1兆円近くに達する。東芝は融資の必要に迫られているが、その惨憺たる業績は投資家を尻込みさせている。ムーディーズは東芝社債の格付けをジャンク級に引き下げた。東京証券取引所は、2016年9月まで東芝への株式融資を禁じた。
東芝のような問題は、日本でだけ発生しているわけではない。東芝と同様の総合企業である米国のゼネラル・エレクトリックも巨額の損失を計上している。金融部門の巨額の欠損によって、ゼネラル・エレクトリックは、2008年の国際金融危機の暗闇に引き込まれた。だがゼネラル・エレクトリックは、この痛みに正面から向き合い、金融部門を分離し、ハイテク製造業の強化に力を集中させることに成功し、現在も米国のモンスター企業としての地位を保っている。