多国籍自動車メーカーの中国での出資率の制限緩和問題は、自由貿易区改革の重要議事に組み入れられている。上海自由貿易区経済発展局の王彬局長はこのほど、「国家の現行規定では、合弁自動車メーカーの設立においては、中国企業の出資率を51%以上とすることが義務付けられている。自由貿易区は今後、この51%という制限の緩和に向けて尽力していく」との意向を示した。北京商報が伝えた。
メディア報道によると、王局長は、今月13日に上海で開催された「2014中国自動車浦東フォーラム」において、「合弁自動車メーカーの株式は、中国側が51%以上保有しなければならないという規定があるが、これは国内自動車製造業の発展の足跡と関係がある。上海自由貿易試行区でサービス業の開放を進める上で、この制限が緩和されるべきか否かについて検討を重ねてきた。制限緩和を進めるための条件は、現時点ではまだ整っていないが、突破口を開く可能性があるか否かを今後関連部門と繰り返し話し合っていきたい」と語った。
合弁自動車メーカーの出資比率について、これまでにもさまざまな議論が繰り広げられてきた。かつて、中国自動車工業協会常務副会長兼秘書長の董楊氏は、合弁自動車メーカーの出資比率の制限緩和について、「いったん規制緩和が実施されると、一部の自主ブランドメーカーは、壊滅的なダメージを受ける恐れがある」という理由で、反対の立場を明確に表明した。一方、吉利集団の李書福董事長は、「出資比率の規制緩和を断行して初めて、自動車業界に本当の意味での公平な競争環境がもたらされる」と主張している。
中国工業・情報化部(工業・情報化省)の苗圩部長は、今年3月に開催された「2014年自動車界『両会』代表委員座談会」において、「合弁自動車メーカーの出資比率の問題については、もうしばらく様子を見る必要がある」との見方を示した。
自動車業界のベテランアナリストである賈新光氏は、以下の通り指摘した。
合弁自動車メーカーの出資比率制限がこれまでずっと緩和されないままだった主な要因は、国有6大メーカーをはじめとする既得権益層が、制限緩和に対して猛烈に反対していることによる。国有自動車メーカーはそれぞれ自主ブランドを持っているが、それらから得られる利益は毎年ごく僅かで、主な利益は、海外メーカーと提携して設立した合弁会社から上がったものだ。出資比率制限が緩和されると、合弁企業の中国側は、厳しい局面に立たされることになり、一部国有メーカーは赤字に転じる可能性が大きい。
首都経済貿易大学産業経済研究所の陳及所長は、「短期的に見ると、規制緩和は国有自動車メーカーの営業収益にマイナス影響を及ぼし得る。しかし、長期的なスパンで見た場合、国有メーカーの技術研究や革新の強化に刺激を与え、より前向きな姿勢で自主ブランドを開発していく上でプラスに働くだろう」との見通しを示した。
市場内での猛烈な反対の声に対し、陳所長は、「まずは、小さな規模で試行を進め、一定の期間様子を見て、ゆっくりと推し進めるべき」と提案する。王局長も、「中国側も外資側も、出資率の拡大を望む気持ちは同じだ。ただ外資側の出資率が調整されるにしても、規制緩和について本格的に検討する場合は、双方が十分話し合った上で決定する必要がある」と提言した。
陳所長は、「先行試行」の責任を負うのは上海自由貿易区であり、合弁自動車メーカーの出資比率の調整は、最初に蟹を食べた人のように、勇気をもって臨まなければならない」と強調した。(編集KM)
「人民網日本語版」2014年8月15日