中国の外資系企業によるリストラに歯止めがかからない。デジタルメディアソフトのリーディングカンパニー・アドビシステムズ(Adobe)は24日、中国にある研究開発会社を、販売部門だけを残して完全に閉鎖すると発表した。これまで同社が中国で展開していた研究開発・技術業務のほとんどは、他の同社研究開発拠点に引き継がれることになる。京華時報が報じた。
〇販売業務のみ保留
Adobe関係者によると、中国の研究開発支社は12月末に営業を終了するが、上海、北京、広州、深セン、香港、台湾の販売業務部門だけは保留される。同社は今後、販売業務を中心に中国市場を広く開拓していく方針という。
Adobeは1998年に中国市場に参入、絶大な人気を誇る図形処理ソフト「Photoshop」、PDF閲覧ソフト「Adobe Reader」、2次元アニメ制作ソフト「Flash」、オーディオソフト「Audition」などのソフトウェアはすべて、同社が開発、製造した。2006年10月、Adobe中国研究開発(R&D)センターが設立、営業をスタートした。これにより、中国およびアジア市場での生産現地化が本格的に始動、現地に特化した開発業務を展開した。また、提携した現地企業にサポートを提供、他のAdobe R&Dセンターと、最前線かつ最も革新的な製品の共同開発を進めた。
〇多くの従業員がリストラの対象に
現在、中国のAdobe R&Dセンターには、約400人の研究開発スタッフがいる。メディア報道によると、R&Dセンターが閉鎖された後、米国本社またはインド支社に約30人が転勤するが、残りの従業員はリストラされる見通しという。リストラの慰謝料に関する交渉を担当している従業員によると、解雇される時点で、慰謝料もしくは「N+5カ月分」の退職金(N=同社での就労期間)のどちらか一方を受け取る選択を行うという。
24日、記者がAdobe側に、解雇する従業員の新しい職場探しに関する状況について尋ねたところ、はっきりした答えは得られなかった。同社は、「R&Dセンターの閉鎖は、全社的な戦略の一部に過ぎない。Adobeが中国市場における経営重点の調整を進めるにつれて、もともと中国が中心となっていた研究開発・技術業務が、他の研究開発拠点に引き継がれる流れになった」とだけコメントした。
〇R&Dセンターの閉鎖は業績悪化が原因?
Adobeの人事担当高級副総裁を務めるドナ・モリス氏は、「R&Dセンターの閉鎖と研究開発の業績とは、一切関係がない」と断言した。しかし、2014年第3四半期の財務報告書によると、Adobeの営業収入は、前年同期比1%増の10億1千万ドル(約1103億200万円)で、目標に届かなかった。また、同時期の純利益は4470万ドル(約48億8200万円)と、前年同期の8300万ドル(約90億6400万円)に比べ46%も激減した。
専門家は、以下の見方を示した。
従来のPC端末では、Adobeはデジタル出版業界で大きな市場シェアを占めていた。だが、ここ数年、同社もこれまでのパッケージ版の販売業務から、モバイルネットワークとクラウドサービスに業務の重点をシフトし始めた。この移行プロセスにおいて、デスクトップ版の成功を繰り返すことができず、同社の中国における業績が、中国での運営を十分させられるものではなくなってきた。(編集KM)
「人民網日本語版」2014年9月26日