景山公園から見える故宮(写真提供:寺崎秀俊さん)
2013年3月まで熊本市の副市長を務めていた寺崎さんは、総務省(旧自治省)からの派遣で昨年6月にクレアの所長として北京に赴任した。以来1年3カ月の間に、景山公園に訪れた回数は、すでに14、5回を数える。月1以上のハイペースで景山公園に訪れている。
――昨年6月に中国に赴任してきて、まずは何を置いても故宮に行こうと思ったんです。浅田次郎さんの小説「蒼穹の昴」を読んで、故宮に対する思いが膨らんでいたこともありますし、皇帝が明から清にわたって長く暮らしていた宮廷をそのままの姿で見れるなんてすごいことですよね。
故宮に行った日は、とても暑い日で、6時間かけてヘロヘロになりながら故宮を見終わって、北門を出て見上げると、こんもりとした緑の空間がありました。これはなんだろうと思って、入って歩いてみると、偶然崇禎帝が縊死した場所に出たんです。崇禎帝の話は以前にも何かで読んで知っていたので、「これが、大中華を治めた皇帝が寂しく首を吊って死んだ場所なんだ」と感慨深いものがありました。
その日は天気はあまり良くなかったんですが、上に登っていくと、山頂から360度北京の光景が眺められました。とてもいい風が吹いていて、これは素晴らしい場所を見つけたなと感動しました。それ以来、今日は天気が良さそうだなと思うと、バスを乗り継いで一人で景山公園からの夕景を楽しんだり、日本から友人が来るたびに案内したりしています。
これまで何度も訪れてますが、季節によって日の沈む方向が変わるんです。そうすると、故宮の瓦を照らす光の角度も変わります。時期や時間帯によっても、全然雰囲気が変わります。最近はまっているのは、夕景ですね。先日は、すごくきれいな夕焼けが見えると同時に、逆の方向からはスーパームーンが見れるという贅沢な景色を味わえ、最高でした。
あと、この景色は、崇禎帝も含めて、皇帝が眺めた景色そのものだと思うと感慨深いです。もちろん当時に比べるとビルがたくさん建ちましたが、少なくとも故宮や北海公園の方向に見える景色というのは当時の北京のままですよね。歴代の皇帝が眺めた景色を今自分が見ていると思うと、感無量ですね。