――もともとお茶は好きで、日本にいるときから、コーヒーではなく、お茶党でした。でも、気功を勉強し、色々な本や専門書を読む中で、人として何が大切かと考えたときに、やはり食べ物、飲み物だということに行き着いたんです。特に、東洋人にとってはお茶が重要です。お茶は歴史的にも必ず登場するものですし、学問としても立派な分野だと思っています。
中国には按摩や針灸など色々な独自の治療法がありますが、その中で気功は自分が自分に対して行える唯一の治療法なんです。按摩や針灸は他力ですが、気功は、元々導引という言葉を使うように、道具も使わず、誰にも頼らず、自分の自然治癒力によって、自分で解決する治療です。
これは、自然界では動物たちが自然にやっていることなんです。身体が悪くなったら、薬草を食べて治すとか。だから、気功医学・医療は決して人を治してあげるというものではなく、身体の自然治癒力、免疫力を高めて、自分の身体を治すお手伝いをするものです。そのために、こういものを食べてくださいとか、飲んでくださいとかアドバイスをする。その飲食のアドバイスの中に、お茶も含まれます。
つまり気功の勉強とは、気功のことだけを勉強すればいいわけではなく、気が遠くなるような膨大な範囲に及んでいる。宮崎さんも後になってそれに気付いたという。
――気功は、中国伝統医学に基づいた学問を基本としています。中医学の基礎理論はもちろん、呼吸法、食事療法、運動なども含まれます。どういうふうに体を動かすかというのも全部含まれているので、気功を勉強しようとすると、栄養学から中医学、漢方の知識、ツボの位置から、色々なことを学ばないといけません。
具体的には、陰陽五行説、気血津液、臓象概説、経絡概念、四診、八綱弁証、推拿按摩、漢方、穴位などの施術法、自然療法、呼吸法、操体法、気功の功法、太極拳、丹田法、勁力の使い方など、数年そこらでマスターできるものではありません。
若いときは、結果しか見ていなかったので、気功を操って、人を治してあげればいいと漠然と思っていたのですが、後々蓋をあけてみれば、あれもこれも知識がないと治療はできないということに気付きました。おそらくこれが結果的に北京滞在19年になった実質的な理由でしょうね。
宮崎さんはこうして気功を中心にそこから派生した様々な分野を勉強していく。お茶や薬膳、中医学、栄養学、太極拳、古武術、ヨガなど。それらを学びつづけるストイックな姿は、どこか修行僧を彷彿させる。
――続けていくことに、何の意味があるのかというのは、やはり、その先に到達する時の感動っていうのを追い求めているんだろうなと思います。諦めなければ、結果は多少なりとも出ますから。競技というのは、短命ですよね。若さが命のところもあって、でも、本来はそういうものではないと思うんです。スポーツにしても、若い時に勢いがあるのは誰も知っている。でも、その後、自分の中でどんな風に変化していくのかを知ることが、自分自身一番楽しめるものではないでしょうか。続けてさえいれば、必ず発見がある。大きな目で見ると、老いの美学と共通していると思います。
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