元中国残留日本人孤児が訪中　「私の娘は帰っていない」 (2)

健在の中国養母の一人、李淑蘭さん。御年90歳。

「ただただ可哀想な子どもを助けたかった」

ハルビン市長春街198号に位置する古びた住宅地に暮らす李淑蘭さん（90）は、かつて日本に帰った養女が送ってきた写真を取り出した。1996年に会ってからというもの、写真でしか彼女を見ることができなくなった。その後は音信が途絶え、うつになってしまっているという噂を聞いた。

李さんは初めて養女と出会った日のことを覚えていた。難民収容所から出てきたばかりの当時5歳になる養女はやせ細っていた体で、頭は垂れ下がり、腕は大人の親指ほどしかなく、体には虱がわいていた。日本の母親は、自分には4人の子どもがおり、この弱り果てた娘を国に連れて帰れるだけの気力が残っていないから、引き取ってくれないかと、身振り手振りで李さんに頼み込んだという。1945年8月、日本は敗戦を宣言、関東軍は一斉に撤退し、日本の開拓団の人々は日本の統治組織と関東軍に見捨てられ、四方八方に逃げ回った。李さん夫婦はこの養女・池辺順子さんを引き取り、田麗華と名づけた。

なぜ侵略者の子を引き取ったのかという問いに対し李さんは、「ただただ可哀想な子どもを助けたかった。日本に侵略されたが、日本は敗戦した。彼ら（一般人）を虐めるわけにはいかない」と話す。